2009年1月7日水曜日
半島を出よ/村上龍
村上龍・著 幻冬舎刊 2005年
2011年の日本を舞台とした村上龍の長編小説である。
この時代の日本は政治・経済ともに破綻し、国際社会からも孤立していた。そんななか、北朝鮮の特殊戦部隊の精鋭9名が秘密裏に福岡に上陸し、プロ野球の試合が行われている福岡ドームを占拠、その後北朝鮮からの本隊と合流し、福岡の分離独立を目指して行動する。
著者・村上龍の膨大な量のリサーチと数十人に及ぶという脱北者へのインタビューによって支えられたリアリティに、とにかく引き込まれる。
しかし、この作品は現代の都市の弱点を露呈し、危機管理意識
の薄弱な我々に対する警句でもある。
たった9名で制圧でき、満員の観客がそのまま人質になる福岡ドーム。
病院を背にすることで大規模攻撃ができないようにさせる野営地の広場。
特殊戦部隊の本拠地にもなり、地下駐車場が重犯罪人の監獄にもなる超高層リゾートホテル。
市民の憩いの場として開かれているが故に最悪の戦場となる大濠公園。
そしてこの福岡占拠という大事件に終止符を打つ最大の破壊兵器もまた、建築である。
これは村上龍による現代都市・建築論である。
yoichi
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