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2009年6月21日日曜日

神山健治の映画は撮ったことがない 映画を撮る方法・試論

神山健治・著 株式会社INFASパブリケーションズ 2009年

この本は神山健治が雑誌・STUDIO VOICEにて行っていた同名の連載に、その補足、著者と中島哲也、著者と押井守の対談を付け加えたものである。

神山健治は主にアニメーション作品を監督している。先のレビューで取り上げた「東のエデン」の他に、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」シリーズや「精霊の守り人」の監督を行っている。

著者は劇場で公開されるような所謂映画は撮ったことがないながらも、20分という短いフォーマットのアニメを80本近く監督してきた。結果として見えてきた映画とは何かということ。その本質と方法論についてこの本は述べている。

よく映画監督と建築家は似ていると称されることがある。また映画と建築も似ていると言われる。この本が一般的な映画監督像について語っているかどうかは議論の余地はあるであろうが、確かに似ているところがあると感じた。LESSON_26の『映画監督とは…』において神山健治はエンターテイメント映画の正体と、監督の個性の獲得にかんするおおぐくりな答えとして6つの要素を挙げている。その5番目を引用すると「映画は総合芸術だといわれるが、総合的であるがゆえに合議的であってはならない。“誰か”の独善的な思想に基づき、コントロールされていなければならない。」(p.80より)とある。
建築家とはまさにそういう存在なのではないかと思う。もちろん社会性やクライアントの要求、様々な条件を建築家が飲み込んで設計を行うように、監督もその能力を兼ね備えていなければならない。しかし、その設計において、要素がいるいらないの判断をし得るのは、建築家であり監督しかありえないのである。

もちろん映画と建築は別のものであり、技術体系はまったく異なる。しかし、あるものを作っていく、しかも多くの人の分業により作っていき、最終的に社会に公開するという部分によって、映画と映画監督はメタファーとして学んでいくべきことは多いと改めて感じた。

多くの参考作品も取り上げられていて、映画の勉強にもなる一冊。
アニメばかりでなく映画も見て行きたいと思わされた。

東のエデン


「東のエデン」は2009年4月9日からフジテレビ系列で11話が放送されたTVアニメである。原作・脚本・監督は神山健治で、制作はプロダクションI.G。キャラクター原案を羽海野チカが担当した。
ストーリーをものすごく簡単に説明すると、主人公は100億円の電子マネーが入った携帯を突然渡され、日本を救うためのゲームに強制参加させられる。プレーヤーはセレソンと呼ばれ、同じく強制的に参加させられたものたちが他に11名いる。100億を使い切ってしまうか、他のセレソンが日本を救ってしまったらゲームオーバーである。
Y-PACラジオVOL.5の中で出てきたのは、作中の東のエデンという携帯サイトについてである。画像認識機能と、その画像に対してのWiki的なタグ付けというサービスが東のエデンのサイトでは行われいる。このシステムはウィキペディアなどのWikiシステム、ニコニコ動画などのタグのシステムに似ている。
このアニメを見ていて思い出したのが、「思想地図 Vol.2 特集・ジェネレーション」の中に収録されている『ゲームプレイ・ワーキング―新しい労働観とパラレル・ワールドの誕生』という鈴木健の文章である。コンピューターの歴史のはじめ200年間は人間が演算素子であったヒューマンコンピューティングの時代があった。現在では問題解決や冗長性を含む問題に対しては人間の並列・集合知が機械的コンピューターより役に立つ。そして、そのような集合知をゲームをやっているような感覚で労働に変換するのがゲームプレイワーキングである、というのがその文章の僕なりの要約である。人間の並列接続によるコンピューター化である。
東のエデンやWikiシステムが行っているのはまさにこれである。しかし、このことがもたらす弊害として、一人ひとりは自分が行った書き込み・投稿・コメント・作業などがどういう結果をもたらしているのかを認識できないことが多い。
東のエデンのラストにおいて、2万人のニートは自分たちの行為(書き込み)がどういう目的に対して行われているかを認識した上で行為を行う。
行為の持つ目的性や達成感の回復を2万人のニートが感じているのかは描かれてはいない。
そして、ニートたちが行った行為が労働と呼びうるのかは分からない。
しかし、神山監督はニートや形骸化する就職活動、強制的な肉体労働(ドバイにて)のエピソードを交えながら、働くということ、労働ということの意味をこの作品で私たちに対して問うているような気がする。

2009年4月4日土曜日

グラン・ヴァカンス 廃園の天使〈1〉 /飛浩隆


飛浩隆・著 早川書房刊 2002年

最近読んで面白かったSF小説。あらすじ↓

ネットワークのどこかに存在する、仮想リ ゾート“数値海岸”の一区画“夏の区界”。南欧の港町を模したそこでは、人間の訪問が途絶えてから1000年もの あいだ、取り残されたAIたちが、同じ夏の一日をくりかえしていた。だが、「永遠に続く夏休み」は突如として終焉のときを迎える。謎のプログラム の大群が、街のすべてを無化しはじめたのである。こうして、わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦がはじまる。



この物語 の舞台である夏の区画は、陽光の下に輝くのどかな港町であり、そこに登場するAI達は、あたかも人間のようだ。
しかし、物語が進み世界が崩壊していくのに 合わせ、“夏の区画”の本当の姿が、視覚情報だけでなく、AI達の関係や感情までもが綿密にデザインされ、それが歯車のように噛み合って成立していた世界 の姿が浮かびあがってくる。

仮想空間、そこではデザインの領域が物質世界に比べはるかに拡大している。

もし現実に高性能の仮想空間が誕生したとしたら、どのように建築家はかかわっていくのだろうか。
読み終わった後はそういうことをぼんやりと考えていた。
 
夏 の区画の構造は明らかにされるが、物語の進行によって生じた多くの謎はこのシリーズの次巻以降へ持ち越される。
現在、2巻目となる「ラギッド・ガール」ま でが発売されており、こちらは現実世界、数値海岸の双方を舞台とした短編集となっている。
仮想現実の仕組みや仮想空間の現実世界での位置づけ等が語られ、 よりSF的な側面の強い作品で、こちらも刺激的で面白い。
しかしまだ完結しておらず、次巻の発売が非常に待ち遠しい。

2009年3月19日木曜日

ノルウェイの森/村上春樹

村上春樹・著 講談社 2004年

旅行中に読み始めて読み終わった。読んだのは文庫版のほう。

ストーリーは「僕」とその周りのごく少数の人々の出来事をつづったもの。
主人公を含めた登場人物の多くが何かしらの欠陥を抱えている。
僕の視点から語られる淡々とした物語。
主人公が様々な喪失と再生を繰り返す。

私が読んで得られた感想は、人は不完全で一人では生きられないというシンプルなこと。
常に不完全な自分に喪失感を感じながら生き、他人と補完しながら生きているということ。

村上春樹はまだそんなに多く読んだことがないけれども、読後感が独特。
読み終わったときの達成感のようなものはない。
読んでいるときは、読んでいることが自然になる。
そして、読み終えてからも、特に読み直したいと思わない。
でも、また読み出したとしたら、それはすごく自然に読めるのだと思う。

息をするように読める作品。

2009年1月7日水曜日

半島を出よ/村上龍


村上龍・著 幻冬舎刊 2005年

2011年の日本を舞台とした村上龍の長編小説である。
この時代の日本は政治・経済ともに破綻し、国際社会からも孤立していた。そんななか、北朝鮮の特殊戦部隊の精鋭9名が秘密裏に福岡に上陸し、プロ野球の試合が行われている福岡ドームを占拠、その後北朝鮮からの本隊と合流し、福岡の分離独立を目指して行動する。

著者・村上龍の膨大な量のリサーチと数十人に及ぶという脱北者へのインタビューによって支えられたリアリティに、とにかく引き込まれる。

しかし、この作品は現代の都市の弱点を露呈し、危機管理意識
の薄弱な我々に対する警句でもある。
たった9名で制圧でき、満員の観客がそのまま人質になる福岡ドーム。
病院を背にすることで大規模攻撃ができないようにさせる野営地の広場。
特殊戦部隊の本拠地にもなり、地下駐車場が重犯罪人の監獄にもなる超高層リゾートホテル。
市民の憩いの場として開かれているが故に最悪の戦場となる大濠公園。

そしてこの福岡占拠という大事件に終止符を打つ最大の破壊兵器もまた、建築である。

これは村上龍による現代都市・建築論である。

yoichi

2008年12月18日木曜日

review start!!!

Y-PAC review を新しく始めます!

やろうと言って早数ヶ月放置してしまったので、いろんな人が参加しやすいブログ形式でレビューページを始めたいと思います。

レビューの対象は問いません。


本、映画、CD、DVD、マンガ、建築、展覧会、ライブ、コンサート、演劇、、、


誰か個人のブロガーによる批評ではなく、Y-PACという建築学生の集団がつくるレビューページのカタマリをつくれたらいいなと思います。
Y-PAC weblogとは違った批評空間にしましょう。
とりあえずβ版として書き方は決めずに行きます。
その代わりラベルと呼ばれるジャンルのタグだけはキチンとつけてください。
そこだけよろしく。

ちなみにこの投稿はある程度レビューがたまってきたら消します。説明だから。

それでは諸君、自由に書いてくれ給え!!