2009年12月12日土曜日

しぜんとくらすけんちく展




横浜国立大学中央図書館情報ラウンジにて12月1日から4日間で行われていた「しぜんとくらすけんちく展」は、横浜国立大学の学部2年生の授業であるデザインスタジオⅡの第2課題「自然の中の居住単位」の成果物の展示会である。今回は2年生有志約10名の作品が展示されていた。展示会の様子・報告はY-PACer伊東のレポートをを参照していただきたい。
今回のレビューでは、作品の内容には触れずに「展示の形式」と「課題を展示する意味」の2点に絞って書きたいと思う。

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■この展示が生み出した「面白い状況」
「しぜんとくらすけんちく展」の展示の形式として特徴的なことは、模型を置くテーブルの面全てを白い紙で覆い、そこに模型とドローイング、そして多数のサインペンを置くということである。このようなかたちで展示することにより、来場者がその作品に対して感じたことを、すぐにその場に書き残すことが可能となり、またそのコメントに対するレスも自然発生的に書き残されていた。そしてポスターなどを含めた会場の雰囲気を徹底的にキャッチーに仕立て上げることで、コメントを書残しやすい空気を作り出すことに成功していた。書き残されたコメントも様々である。専門的な目線を持った意見から、率直な感想、つぶやき、野次など。いうなれば「ニコニコ動画的」な状況が、建築の課題を対象として現実空間において起こっていたと言える。
大学には様々な専攻の人達がいる。その人達がそれぞれの目線で作品に対してコメントやツッコミをいれ、またツッコミに対する反論を残す。そのような面白い状況を生み出すことに成功していた。

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■学生が課題を展示することの意味
建築の設計は、単なる創作活動でなく、敷地・用途・法律・環境・力学・歴史・人間・周辺住民・赤の他人etc…など様々なパラメータのなかから最適解を見つける作業であり、個々の美学や創造力は、最適解を見つけるに至る解法や時々の判断において発揮されると考えている。そして、学校の課題において決定的にに足りないのは「他人の意見」であると感じている。
学生が課題を展示することの意味は、自己表現でも記念でもやってやった感でもなく、足りない他人の意見を補うことにある。自分の作品に対して他人がどう感じるかを知ることにより、自分の中により多くの視点を獲得することができる。

展示会場を構成した彼らがニコニコ動画的展示空間を作り出したのは、他人の意見を渇望していたからであるのだと思う。彼らの目的はある程度達成されていたのではないだろうか。だからこそいろんな人達のコメントを、野次や批判も含めて、自分の中にしっかりと取り込んで欲しいと思う。

オギノタイガ

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